みなさんこんにちは。
現在の京都は大降りの雨です。

さて、今回は、読んだ本の感想です。

さびしすぎてレズ風俗に行きましたレポ

 
pixivに掲載されていたのを、人に勧められて知りました。
今回、単行本を手に取ってみて、作者の永田さんがレズ風俗を利用するに至るまでの
10年間に触れることができて、深く共感しながら読み進めました。

楽しかった高校生活を終えて

エッセイは、永田さんの高校卒業から始まっています。
大学には進みますが、半年で退学されたそうです。
退学の理由は書いてありませんでした。

その後、彼女は「居場所」を求めてバイトを始めますが、だんだんしんどくなり、
遅刻早退欠勤を繰り返すようになります。

当時を思い返して永田さんが「今ならわかる」と書いているように、バイト先と
いうのは、「何があっても私を認めてくれる居場所」ではなく、「労働の対価として
賃金を得る場所」です。
確かに、それを取り違えてしまうと、働くということはしんどいし、何かトラブルが
あったときのダメージも大きいと思います。

永田さんは摂食障害を持っているのですが、このエッセイに書かれた過食衝動の
エピソードが強烈でした。
バイト先の持ち場(スーパーマーケットのレジ)から更衣室に駆け込み、期限切れで
回収してある食品をむさぼり食う。
これを繰り返す。

筆者も拒食過食の傾向がありますが、ここまでの衝動が存在するんだなあ、と
驚きました。
無理に無理を重ねた永田さんは、出勤できなくなり、バイトをクビになります。

親に認められたい

それでも、永田さんはがんばります。
「親に認められたい」一心で、朝起きて三食食べて夜眠るという普通の生活をし、
バイトを始めます。
でも、親御さんは永田さんのがんばりをことごとく否定します。
「バイトでしょ、正社員じゃないでしょ」
がんばってもがんばっても、否定しか返ってこない。
なんのために働いているかわからなくなる永田さん。

その間、マンガを描き始めます。

正社員になるべく面接に行くと、話をする中で「あなたはマンガがんばったらいいよ」と、
お店の人が優しく言ってくれます。
親に認められたい永田さんでしたが、マンガを肯定されたことで、親の思惑が怖くても、
マンガの道を歩むことを決めます。

ここらへん、彼女は強いなあと思います。
筆者も、極端に「親の思惑」を気にする人間です。
日常生活のほんの些細なことでも、親の意思に添わないと思うと怖くなります。
もういい歳なのに、と客観的に見ると恥ずかしい思考回路ですが。

永田さんの気づき

永田さんは、自分の苦しみをなんとかしようといろんな本を読むうちに、やがて自分の
欲求に気づき始めます。

「誰かに抱っこされたい」
「抱きしめられたい」
「性的な行為をしてみたい」

今まで自分の奥に封じ込めてきた欲求に目を向け、「親の思惑がすべて」という状態から
決別しようと、レズビアン風俗の利用を考えます。

エッセイの中で彼女は、「翌日 世界は広くなっていた」と書いています。
自分には一生関係ないと思っていた性的なこと、そこに足を踏み入れようと決意したことで、
その世界へ行けることがわかった。
ほったらかしだった自分を手入れし、大事にし、整えてやれるようになった永田さん。
仕事もがんばれるようになり……。

初めてのキス

そして、ついにその日はやってきます。
年上のお姉さんと待ち合わせし、ラブホテルへ。
しかし、「心を開く」というのがどういうことかはっきり捉えられていなかった永田さんは、
待ち望んだこの状況を楽しめません。
「これってかなり高度なコミュニケーションじゃないのか?!」と戸惑います。
結局、心を開けなくても優しかったお姉さんに申し訳ない思いでいっぱいになりながら、
時間を終え、お姉さんとばいばいします。
「そうか、セックスってコミュニケーションだったんだ……」

経験をレポートしてみたら

そして、一大決心して起こした行動をマンガレポとして発表したことで、永田さんは
「生きやすく」なります。
マンガレポに対する大きな反響、自分のメッセージがたくさんの人に届いた実感、
人に認められた喜び……。

永田さんは、人が人としてがんばれる原動力のことを「甘い蜜」と表現されています。
世間の人たちはみんな、居場所や生きる力、生きる意味などの「甘い蜜」がなめられる
から日常生活を滞りなく営んでいるのだろうと。
そして、今回の体験で、永田さん自身の口の中にも大量の「甘い蜜」が注がれたそうです。

このエッセイの本編は、「親不孝が怖くて自分の人生が生きられるか!」という永田さんの
言葉で終わっています。

筆者の共感

「親の思惑が怖くて自分の本心がわからない」「誰かに抱きしめられたい」あたりはすごく
共感しました。

でも、マンガという、他人にも「がんばったらいい」と思ってもらえる仕事を選べたことは、
永田さんの強さかなあと思いました。

実は、今の今も筆者は「親はどう思っているのか」が気になって仕方ないので、
永田さんの「親不孝が怖くて自分の人生が生きられるか!」という言葉を心に刻んで、
この状態を脱したいと思います。